音には相性がある
■ 音には相性がある■
楽器にも相性というものが2つ存在すると思う。もちろん、ピアノにもある。
1つは、楽器と奏でる人との相性。
これは選ぶ側である人が、楽器を手に取ったときや音を出したときに、様々な角度の視点で、弾きながら感じ取っていくもの。
・ 弾きやすさ
・ その楽器が奏でる音の心地よさ
・ 重量(ピアノの場合は、弦やペダルの重さ・固さ、タッチ感) など
これは最初は弾きやすく感じても、しばらく弾いていると感覚もまた変わってくるので、ポロ~ンと少し音を出しただけでは決められない。
もう1つは、その楽器が持っている音と曲の相性。
ピアノは製造メーカーによっても個性がかなり違ってくる。
もちろん演奏者の腕と感性に左右されるのだけれど、ピアノによって曲の聴こえ方も全然違ってくると思う。
私の個人的な感覚でいえば、例えばドビュッシーの「月の光」。
スタインウェイも綺麗だけれど、今知っている音で選ぶなら、この曲にはベーゼンドルファーが一番似合うと思う。
メロディから感じられる、静かにじんわりと降り注ぐほのかな月の光。
その安心に満ちたホッとする光は、ベーゼンの音が醸し出す空気がいい。
邦楽などのPOPS曲なら、ヤマハ。
ヤマハの音は「打てば即ポーンと響く」ように非常にクッキリ・ハッキリした音が耳に届くので、軽めのPOPSはヤマハが聴きやすい。
高音領域が綺麗な魅力のキラキラした曲なら、絶対にスタインウェイ。
音は空気の振動で耳に届くもの。
落ち着いている、キラキラしている、ひっそりしている、明るく軽やか。
曲の空気は1つではない。
奏でる曲がどんな空気をどれだけ持っているのかを感じながら相性の合うピアノで弾くと、よりその曲の世界の住人になれるような気がする。